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2023.01.12

大腸癌の治療

大腸癌の治療

森ノ宮胃腸内視鏡ふじたクリニック 院長の川口です。今回のテーマは「大腸癌の治療」です。
「大腸癌といわれた」「周りの人で大腸癌といわれた人がいる」とてもショックで不安が大きいかと思います。
でも、あわてないでください。大腸癌は他の臓器にできる癌とくらべて比較的、治療がしやすい癌のひとつです。
不要な心配をしないためにも正しい知識をつけておきましょう。

「大腸癌(疑い)」といわれたら?

検診で便潜血反応が陽性だった場合や下痢、便秘、血便などの症状で大腸癌が疑われた場合にはまず確定診断が必要です。
一般的には「大腸カメラ(大腸内視鏡検査)」を行い、病変の一部を採取(「生検」といいます)します。
採取した病変を細胞レベルで観察(病理検査)してがん細胞があれば診断が確定します。
大腸癌の診断が確定された場合、次に進行具合(“病期”とか“ステージ”といったりします)を調べます。
具体的にはCTや、場合によってはMRI超音波検査(エコー)、PETなどの検査によって癌のひろがり(“転移”や“播種”といいます。)を診ていきます。

下表に医師が用いるステージ分類を提示しておきます。ステージが高いほど進行している状態となり、ステージにあわせて治療をおこないます。

ステージ分類
Stage 0 癌が粘膜(大腸の壁の表面)にとどまっている状態
Stage Ⅰ 表面から発生した癌が大腸の壁の中でとどまっている状態
Stage Ⅱ 表面から発生した癌が大腸の壁の外まで進んでいる状態
Stage Ⅲ 癌が周りのリンパ節にもとんでいる(転移している)状態
Stage Ⅳ 癌細胞が血流にのって他の臓器にとんでいる(転移)、または大腸の壁を破った癌細胞がお腹の中に散らばっている(播種)状態

ひとことで「大腸癌」といっても進行具合は様々です。慌てず、まずは現状を把握していきましょう。

大腸癌の治療法はどうやって選択するのですか?

大腸癌における治療の原則は以下の通りです。

  • 根治(治療で完治すること)の可能性があれば根治を目指した治療を選択する。
  • 患者様にとって出来るだけ負担の少ない方法を選択する。

前述したとおり、大腸癌は他の癌と比べて治療しやすい癌です。

そのため、進行度の悪いStageⅣであっても転移した癌を含めてとりきれるのであれば手術で根治を目指した治療を選択することもあります。
一方で、癌の大きさが小さくてもリンパ節に転移している可能性が高い場合には内視鏡的治療(大腸カメラを使ったお腹にメスをいれない治療)ではなく、外科的な手術(お腹に穴をあけたり、切ったりする手術)を選択する場合があります。

また、あらゆる治療法には偶発症のリスクがあります。
主治医の先生は患者さんの現在お持ちのご病気(糖尿病や肺疾患・心疾患など)や年齢、体力などを総合的に加味して適切な治療法を提示してくれます。

治療法の種類にはどんなものがありますか。

内視鏡的治療

      • 転移の可能性がほとんどなく、腫瘍が一括で切除できる大きさと部位にあることが条件になります。
      • 大腸カメラから器具を出して切除できるのでお腹に傷はつきません。小さければ日帰り手術や12日の入院で治療可能ですが、大きい場合は1週間程度の入院が必要になります。
    • 手術治療(外科的な治療)】

      • 根治を目指した手術では、癌のある部分から十分な距離をとって大腸を切除し、転移している可能性がある範囲のリンパ節を切除します。
        肝臓や肺に転移がある場合(StageⅣの場合)でも、切除により根治が望める際には肝臓や肺に転移した癌も切除の対象となることがあります。
      • 入院期間は10日から2週間が一般的です。
      • 直腸癌の場合、肛門の代わりとなる便の出口として人工肛門(ストーマ)をつくることがあります。
    • ※TOPIC※ 

      「ロボット支援下手術」

      ロボット本体にカメラと鉗子(かんし)を取り付け、8mmほどの小さな傷口からそれらをお腹に挿入して行う手術です。術者は遠隔操作でロボット本体を動かします。3Dフルハイビジョン画像や拡大カメラが搭載されており、手術部の細部まで観察が可能です。また人間の手以上に関節が多いため、正確で繊細な手術が行えます。

      2018年に直腸に対して保険適用となり、2022年から結腸悪性腫瘍が保険適用となりました。これにより全大腸癌の患者さんに保険適用が拡大されています。

      薬物療法

      • 薬物療法には術後の再発を抑制するために行う「補助化学療法」と「手術で癌のすべてを取り除くことが困難な方に行う薬物療法」とがあります。
    • 「補助化学療法」

      StageⅡの中で再発の危険性が高い方とStageⅢの方が対象となります。原則的には2-3週おきの通院を6か月間続けて行います。

      「手術で癌のすべてを取り除くことが困難な方に行う薬物療法」

      昔と比べて多くの薬が開発され、選択できる範囲が広がりました。癌の遺伝子を調べることで薬の効果が期待できるような特殊な薬や、ノーベル医学生理学賞を授与された本庶佑先生が開発の道を開いた「免疫チェックポイント阻害剤」といった新しい薬も選択肢のひとつとなります。基本的には効果がある限り持続して行っていきます。
      副作用は人によっても、使う薬の種類によっても様々です。主治医の先生からの注意点をよく聞いて治療にあたりましょう。

      これらの他にも 直腸癌の手術前や手術後に行う「放射線療」、肝転移に対する治療法として「熱凝固療法」、術後の限局した再発に対して行う治療法として「重粒子線療法」など治療法は多岐にわたります。

      ご自身の現状と照らし合わせて最適な治療法を主治医の先生と相談して決めていきましょう。

      最後に

    • 最後まで御覧いただき有り難うございます。

      ご自身あるいは周囲の大切なひとが「大腸癌」といわれた時、このブログで一人でも多くの方が不安を取り除き、落ち着いて治療に専念することができれば幸いです。

      今回お話しした内容は大腸癌と診断された場合の治療法です。
      しかし、何より大切なことは「早期発見、早期治療」。癌になる前のポリープの段階で適切に切除していくことが大切です。

      定期的に大腸カメラを受けることにより、大腸癌にならないように気を付けていきましょう。

大阪本町胃腸内視鏡クリニック

堺筋本町駅前にある内視鏡専門クリニック 2022年オープン森ノ宮胃腸内視鏡ふじたクリニックの2号店となります。
鎮静剤麻酔、鎮痛剤を使用した無痛内視鏡(寝ている間に胃カメラ、痛くない大腸カメラ)を行っています。
大腸にポリープがあれば、その場で切除(日帰りポリープ切除術)も行っています。忙しいサラリーマン、主婦の皆さんのために、胃カメラと大腸カメラを同日に行うことも可能です。

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