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2023.02.08

胃がんのバリウム検査 vs 胃カメラ検査

胃がんのバリウム検査 vs 胃カメラ検査

森ノ宮胃腸内視鏡ふじたクリニック 院長の川口です。今回のテーマは「胃がんのバリウム検査 vs 胃カメラ検査」です。
「胃がんについては気になるけど、どんな検査を受けたらいいの?」 「バリウムの検査と胃カメラ、どっちがいいの?」
今回はそんな疑問にバリウム検査と胃カメラ、両方に携わってきた医師の意見として実際の医療の裏側も交えてお答えします。

胃バリウム検査ってどんな検査ですか?

「胃透視検査」や「胃X線検査」ともよびます。バリウムという造影剤を飲んで胃の表面(粘膜)に薄く付着させます。
バリウムはX線(レントゲン)で撮影すると白く鮮明に映るため、表面に付着したバリウムを色々な角度から撮影することで胃の形や粘膜の輪郭・凸凹具合から病変を推測します。

胃カメラ検査ってどんな検査ですか?

「上部消化管内視鏡検査」や「胃内視鏡検査」ともよびます。
先端にカメラがつけられた細長いカメラを鼻もしくは口からのどを通り、食道・胃・十二指腸の一部まで直接観察して病変をみつけます。

胃バリウム検査vs胃カメラ検査

結論からお話しますと、どちらの検査も経験してきた消化器内科医としては胃カメラをお勧めさせていただいています。
実際、私自身も胃カメラ検査を選択し定期的に受けています。ではその理由をみていきましょう。

【胃バリウム検査は指示に従って体を動かす必要がある】

バリウムは液体ですので重力に従って流れます。胃全体にバリウムを付けるために撮影技師の指示に従って、検査台の上で寝転んだ体を回転させる必要があります。
そのため、ご高齢のかたや手足が不自由なかた、耳が聞こえにくく指示が伝わりにくいかたには難しい検査です。
一方、胃カメラは体の左側を検査台につけた横向きの状態で寝ていれば検査は終了します。動く必要がなく、鎮静剤を使用して眠った状態でも検査が可能です。

    • げっぷ(噯気:あいき)の我慢

      • どちらの検査も「げっぷ」を我慢するようにいわれます。胃カメラであれば「げっぷ」を出してしまっても、カメラから再度空気が送り込めますし、カメラの操作で空気量を調整できます。
        一方、バリウム検査の場合「げっぷ」をする度に一旦検査を休止して再度発泡剤を飲んでもらいます。
        胃がパンパンな状態で腹筋をつかって体を回転させるのですから、止めてといわれても出てしまいますよね。
        出してしまって申し訳なさそうにしている患者さんに発泡剤を何回ものんでもらうのは大変いたたまれない気持ちで検査をしていた記憶があります。

        バリウム検査で引っかかった場合、結局胃カメラ検査が必要になる

      • 胃カメラで病変を認めた場合、組織の一部を採取(生検といいます)して悪性の細胞が含まれるか否かを顕微鏡レベルで確認(病理学的検査)ができます。
        つまり1回の検査で異常をみつけて診断まで出来るのです。バリウム検査は胃粘膜の輪郭を描出する検査なので、異常は指摘できますがそれが癌か否かまでは正確に判断できません。
        そのため、バリウムで異常が見つかった場合には胃カメラで生検を結局しなければならないのです。

        • 胃がん発見率に違いがある

          • せっかく検査をうけるのだから、しっかりと見てほしいですよね。
            2022年10月に日本消化器がん検診学会から発表があった「2019年度の検診データの集計」によると、検診目的で胃バリウム検査をうけた受診者数3,869,987人のうち胃癌がみつかったのは2,553人(0.066%)、胃カメラ検査をうけた373,596人のうち胃がんがみつかったのは609人(0.163%)でした。

            発見率でいうと胃カメラはバリウム検査の約2.5倍です。

            造影剤で間接的に粘膜の形態のみで判断するバリウム検査と形態だけではなく、病変の色合いや空気量の調整による変形具合などを直接的にみて判断できる胃カメラでは圧倒的に情報量が違います。そのため、どれだけきっちりみおても検査の性質上これだけ発見率の差が生じてしまうのです。

          • 胃バリウム検査のメリットはないの?

          • のど元をカメラが通らないため、咽頭反射(指をのどに入れた時に「おぇっ」とする反射)がないのが最大のメリットです。逆に言うと胃カメラを敬遠する最大の理由はここにあるでしょう。
            当クリックでは、
              • のど麻酔で反射を抑える
              • 6mmの細い胃カメラで検査を行う
              • 鎮静剤を使用して眠っている間に検査を終わらせる
            • これらにより極力、のどを通る時の不快感を軽減した胃カメラを心掛けています。

            • 胃バリウム検査と胃カメラの裏事情

            • 昔は医師が実際に撮影を行っていました。バリウム検査は立体的な胃を色んな角度から平面に映しながら異常をみつけます。
              こま切れに撮影された写真をみるよりもリアルタイムに撮影しながら異常を見つける方が、明らかに情報量が多いと実感しています。
              しかし胃カメラの技術が進歩するのに伴い、消化器内科医のマンパワーは胃カメラへ注ぎ込まれ、バリウム検査を撮影できる医師が減ったため「撮影は放射線技師が行い・読影(異常があるか否かを判断する診断)は医師が行う」ようになりました。

              そこから更に、バリウム検査の読影ができる医師が減ったため2019年には「胃がん検診専門技師による読影補助認定制度」が認められ、条件をクリアした放射線技師が検診のバリウム検査の読影を行ってよいと緩和されることとなりました。

              このように胃バリウム検査で診断できる医師が年々減少しているのが実情です。

            最後に

          • 最後まで御覧いただき有り難うございます。

            胃がんのリスク調べる検査は採血で調べるABC検診、腫瘍マーカ、マイクロアレイや線虫という虫を使って尿で調べるN-NOSE(エヌノーズ)など市場では色々あります。
            しかし実際に胃がんの有無を直接調べる検査は胃バリウム検査と胃カメラです。さらに細胞レベルで調べる生検で確定診断を行える検査方法は胃カメラしかありません。

            稀ではありますが、当クリニックのように咽頭反射の予防策を幾重に講じてもなお、胃カメラ検査がしんどい方がいらっしゃいます。
            そのような方には胃バリウム検査の恩恵が受けられると思いますので胃カメラと交互に受けていただくことをお勧めします。
            そうでない場合は一般的には診断精度の高い胃カメラをお勧めしております。

            胃がんも早期発見、早期治療により命が助かる疾患です。定期的に検査をうけるように心がけていきましょう。

        大阪本町胃腸内視鏡クリニック

        堺筋本町駅前にある内視鏡専門クリニック 2022年オープン森ノ宮胃腸内視鏡ふじたクリニックの2号店となります。
        鎮静剤麻酔、鎮痛剤を使用した無痛内視鏡(寝ている間に胃カメラ、痛くない大腸カメラ)を行っています。
        大腸にポリープがあれば、その場で切除(日帰りポリープ切除術)も行っています。忙しいサラリーマン、主婦の皆さんのために、胃カメラと大腸カメラを同日に行うことも可能です。

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