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2022.11.17

膵臓がんの発見方法

大阪本町胃腸内視鏡クリニック 院長の藤田です。今回のテーマは「膵臓がんの発見方法」です。

膵臓

膵臓は、胃の背中側にある左右に20㎝ほどの臓器です。
膵液(消化酵素)を分泌したり、様々なホルモンを分泌させる役割があります。膵液の酵素で有名なものにアミラーゼやリパーゼがありデンプンや脂肪を消化する作用があります。
ホルモンで有名なのがインスリンです。血糖値を抑える役割があります。

膵臓がん

膵臓がんは、年間約4.4万人の方が罹患(新たに診断)され、年間3.8万人の方が亡くなっています。膵臓がんはご存じの通り、予後が極めて悪いがんのうちの一つです。
例えば5年生存率のデータでは、胃がんは75% 大腸がんは82%に対して、膵臓がんは8.5%と極めて低い数字となっています。
膵臓がんのステージ(病気の広がり)ごとの5年生存率は、ステージ1で39% Ⅱで17%に対して、ステージⅣになると1.2%しかありません。いかに早期の段階で見つけることが極めて重要です。ただ実際はステージⅣで見つかることが約80%と多く、ステージ1で見つかることは数%しかなく、いかに早期発見することが難しいかが分かります。

膵臓がんができやすい人

膵臓がんができやすい人として、糖尿病の方、アルコール過量摂取、慢性膵炎、喫煙者があります。ほかにも家族歴もリスクとして挙げられます。
またIPMN(膵管内乳頭粘液性腫瘍)といわれる膵内に粘液が袋状にたまる腫瘍も膵臓がんのリスクになります。

膵臓がんがなぜ予後が悪いのか

その原因の一つが、膵臓の「位置」にあります。膵臓は胃の背中側にあります。膵臓にがんができた場合、「胃の症状」として心窩部痛や不快感が出ることがあります。
つまり「膵臓がん特有の症状」というのがないのがあげられます。
次に、検査です。膵臓は胃の背中側にあり、よく検診などで行われる腹部エコー検査(後で詳しく述べます)では胃や腸の空気、脂肪が邪魔をして超音波が届かないことがあります。
つまり検査でははっきりと見えないことが多いのです。

そして次に膵臓がんが「転移」しやすいという性質があります。
膵臓の周りには、動脈やリンパ節が発達しており、肝臓や肺や腹膜に転移や浸潤しやすく、動脈にがんが浸潤することがあります。
これらの理由により、膵臓がんは早期発見が難しく発見時には進行しており、予後が悪くなるのです。

膵臓がんの発見のために

➀症状

膵臓がんには、どのような症状があるのでしょうか?
腫瘍が大きくなって胆汁の流れを妨げるようになると、黄疸(白目や皮膚が黄色くなる)や灰白色便、褐色尿が出ることがあります。また膵臓周囲の神経に浸潤すると背部痛が出ることがあります。また心窩部(みぞおち)の痛みや不快感といった症状が出ることがあります。
そのほかには、糖尿病が急に悪化することがあり、それがきっかけで膵臓がんが見つかることもあります。
ただ、これらの症状は膵臓がんが大きくなってから表れる症状であり、また膵臓がんに特有の症状ではないことに注意が必要です。
つまり症状から、膵臓がんの早期発見することは困難といえます。

②検査 
  • 血液検査

まず簡単に行われる検査として血液検査があります。膵酵素であるアミラーゼやリパーゼといった数値が上がることがあります。
ただ、膵臓がん以外でもこれらの数値が上がることがあり、これだけでは膵臓がんかどうかは分かりません。
続いて腫瘍マーカーがあります。腫瘍マーカーはがん細胞が作り出すたんぱく質などのことですが、膵臓がんではCA19-9,Span-1,DUPAN2,CEAなどがあります。ただしこれらも膵臓がんだから必ずしも上がるというものではなく、あくまで「膵臓がんである可能性がある」という意味にしかなりません。

逆にこれらの数値が高かったとして「膵臓がんかも」の不安を抱えるより、冷静に病院にかかって以下の検査を受けて問題がないことを確認しましょう。

  • 腹部エコー検査

次に行われる検査として、腹部エコーがあります。
腹部エコーは、お腹にゼリーを塗って腹壁から超音波を当てて内臓を見る検査です。
腹部エコーは体に侵襲もなく、検診などでも行われます。問題は膵臓の「位置」にあります。
膵臓は胃の背中側に位置します。超音波は深部(離れた場所)に行くほど減弱するため膵臓は見にくくなります。
また空気があると散乱されてしまうため、胃や大腸にガスがたまっている場合はほとんど観察できないこともあります。

ただ全く見えないわけではなく、膵管が拡張(太くなっている)していたり、膵のう胞(水たまり)があった場合には、膵臓がんを疑ってさらに詳しい検査を進めることになります。

  • CT・MRI

腹部エコーで膵臓がんが疑われる場合は、CTやMRIを受けることがあります。
CTもMRIも輪切りの断面撮影ですが、少し違いがあります。(ここでは詳しい話は割愛します)CTでは造影剤を使った検査が一般的に行われます。
造影剤を使うことによって、腫瘍があるのか、腫瘍に血液が流れやすい性質なのか、また膵臓周囲の血管に浸潤していないかなどの情報が分かります。
(スクリーニング目的として、造影剤を使わない単純CTもよく行われます)
またCTの良いところは、膵臓だけでなく、肝臓などのお腹周辺の臓器をまとめて観察できることです。

MRIでは特に膵液の流れを詳しく見るためのMRCPという検査が行われます。膵臓がんは膵管といわれる消化液を流す管に発生することが90%と多く、その膵液の流れを見ることで小さな膵臓がんでも見つかることがあります。またMRCPは造影剤を使わないことや、レントゲンを被ばくしないため体での負担は小さくなります。

  • 超音波内視鏡

これらの検査をして、膵臓がんが疑わしいときは、超音波内視鏡検査が行わることがあります。(小さな膵臓がんや、塊状を呈さない膵臓がんではCT/MRIでもはっきりと分からないことがあります)
超音波内視鏡は、さきほどの腹部エコーとは異なります。「内視鏡」という名前がついていますが、その通り「胃カメラ」を使った検査です。
ただし通常の胃カメラの機会とは異なり、胃カメラの先端から超音波が出るようになっています。
この機械を使うことで、胃の中の空気に超音波が邪魔されることなく、また胃の裏にある膵臓を胃の中から近距離で観察するため、かなり詳しく膵臓を見ることができます。

ただし、超音波内視鏡には高度な技術と診断力がいるため、検査はほとんど大病院で、また習熟した医師が行います。
(最近では、そのような先生が開業してクリニックでされることもあります)

膵臓がんの早期発見のために

膵臓がんがいかに早期発見が難しいか、お分かりいただけたかと思います。
特有の症状がないこと、検査自体も難しいこと、そして原因が不明であることがその理由です。現代医学をもっても、膵臓がんを早期で発見することは難しいのが現状です。
その中でできることは、膵臓がんになりやすい人(ハイリスクの人)は定期的に血液検査胃エコーを受けておき、少しでも異常があればより詳しい検査を受けておくようにしましょう。
リスク因子のない方も通常の健診を受けておくこと(膵臓がん検診というのはありません)、そして腹部エコーを受けておくことをお勧めします。

また気になる症状があれば、早めに消化器内科に診察に行きましょう

最後に

私自身のことをお話しさせてもらいます。

私の母ですが、膵臓に近い胆管にがんが出来ました。それまで簡単な健診は受けており、その6月の血液検査でも異常はありませんでした。
母はそれまで病気知らずでほとんど病院に行ったこともありません。田舎育ちの母は生活も質素で、食生活も毎日自炊で健康的な食事をしていました。
そんな母が11月になり「何かお腹にしこりが触れる」と訴えがあり、診療時間後に私自身が母に腹部エコーを行いました。
すでに腫瘍はかなり大きく、診断は胆管がんステージⅣでした。手術もできない状態です。

それから2年抗がん剤治療を行い出来ることは全部頑張りましたが、母は天国へと旅立ちました。何が悪いわけでもありません。運命としかいいようがありません。
膵臓がんや胆管がんの怖さはこれまで自分でも何人もの患者さんを診てきて知っているつもりでしたが、改めて母を見て思い知らされました。
少しでも皆さんや家族が 早期発見につながり、予後の改善につながり、楽しい生活が長くなることを願っています。

 

大阪本町胃腸内視鏡クリニック

堺筋本町駅前にある内視鏡専門クリニック 2022年オープン森ノ宮胃腸内視鏡ふじたクリニックの2号店となります。
鎮静剤麻酔、鎮痛剤を使用した無痛内視鏡(寝ている間に胃カメラ、痛くない大腸カメラ)を行っています。
大腸にポリープがあれば、その場で切除(日帰りポリープ切除術)も行っています。忙しいサラリーマン、主婦の皆さんのために、胃カメラと大腸カメラを同日に行うことも可能です。

 

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