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2023.08.31

血便について 疾患と検査について徹底解説

  • 大阪本町胃腸内視鏡クリニック 院長の藤田です。
  • 今回のテーマは「血便」
  • 【血便とは】

排便をしたときに出血を認めた場合を「血便」といいます。血便は、大腸や肛門からの出血を意味します。

出血の程度は様々で、テッシュに血がにじむものや、トイレの水面に鮮血がひろがるもの、便の周りにべっとりと血がつくものまで、いろいろな形で表れます。

一方、通常は大腸や肛門から出血することはないため「血便が認められた」ということは異常であり、なにかしらの病気が隠れていると考えられます。

 

  • 【血便の色、状態】

出血点が肛門に近いほど、血便の出血は赤くなります。

例えば切れ痔の場合は、出血してすぐに肛門から排泄されるため鮮血で液体状になります。テッシュに真っ赤に浸み込んだり、トイレの水面に広がります。

一方、出血点が肛門から離れた場合は、血液が変性し褐色になります。また腸の粘液と混じり、ねっとりとした出血を認めます。

 黒い便で「タール便」と呼ばれるものがあります。これは胃や十二指腸からの出血の際に診られる現象で、血液が胃酸で酸化されて黒く変色するためです。黒い便を認めた時は、大腸からの出血よりも胃、十二指腸からの出血を疑います。(したがって、大腸カメラではなく胃カメラを勧められます)

 

  • 【血便をきたす病気】

血便を来たす病気は、以下の疾患を中心に実に様々な病気があります。

①大腸癌

②大腸ポリープ

③痔

④潰瘍性大腸炎 クローン病

⑤虚血性腸炎

⑥大腸憩室出血

⑦感染性腸炎

⑧薬剤性腸炎

⑨放射性直腸炎

 

  • 大腸癌

大腸にできる悪性腫瘍で、その原因はいまだに不明です。40代から罹患率が増え、50代に入ると急激に罹患率が高くなります。早期の大腸癌ではほとんど症状がなく、進行すると出血のほか、腹部膨満、便が細くなるなどの症状が出てきます。大腸癌(腫瘍)から出血するときは、一気に出血することはまれで腫瘍からジワジワと出血をします。

また大腸癌の部位によっても出血のしやすさが変わります。上行結腸がんの場合、便が泥状であることより腫瘍からの出血は来たしにくく、S状結腸や直腸がんの場合や硬い便がこすれるため出血はしやすくなります。

  • 大腸ポリープ

良性の大腸ポリープでも、大きさが大きくなると出血することがあります。(小さなポリープではほとんど症状がなく、出血しません)ただしポリープからの出血は大量に出ることはなく、便に少し血が付着するなどの変化で出てくることが多い。

切れ痔(裂肛)の場合は、排便時に肛門痛を伴うことがあります。また静脈からの出血であり比較的大量に血が出ることがあります。テッシュに鮮血がにじんだり、水面に大量に広がるパターンです。いぼ痔(内痔核)の場合は肛門痛を伴わず出血することがあります。

  • 潰瘍性大腸炎 クローン病

原因不明の慢性腸炎で、2030代の若い年代でよく認められます。原因不明の慢性腸炎であり、持続する下痢や腹痛を伴うことがあります。出血は炎症を起こした粘膜からジワジワと出るため、大量に出ることは稀であり「粘血便」といわれねっとりとしたレンガ色の便、または出血だけを認めることがあります。

  • 虚血性腸炎

大腸を流れる血流が落ちた結果、腸に炎症を起こし、炎症を起こした粘膜から出血を来たします。血流が落ちて腸に炎症を起こすときに、かなり強い腹痛を自覚します。解剖学的に左側の大腸の血管が血流が落ちやすく、左側腹部痛を起こすことがほとんどです。粘膜からの出血であるため、出血は大量ではなくジワジワと赤い粘液様の出血を認めます。

炎症が強いと腹痛も強く、細菌感染がかぶると炎症反応が上昇することがあります。大量に出血するわけではないので、貧血を来たすことはほとんどありません。

また虚血性腸炎は再発することも多く認めます。

  • 大腸憩室出血

大腸憩室といわれる腸粘膜のへこんだ部位から出血を起こします。動脈性の出血のため、大量に出血を起こすのが特徴です。また出血は突然起こり、特に腹痛などの痛みを伴うことはありません。

  • 感染性腸炎

感染性腸炎のほとんどはウイルスによるものであり、血便まできたすことはあまりありません。ただ、カンピロバクターやサルモネラ、赤痢、腸管出血性大腸菌では、大腸煙幕に障害を起こし出血を伴うことがあります。それほどの炎症がある場合は、同時に腹痛や発熱などの症状を伴うことも多く、また血液検査でも炎症反応の増悪を認めることがあります。

  • 薬剤性腸炎

薬剤性、つまり薬の副作用で血便を認めることがあります。抗生剤によるものが多く、腸内細菌のバランスが乱れ炎症をきたし、その結果血便を認めることがあります。抗生剤を内服して数日後に出血や腹痛を認めることがあります。(問診である程度推定します)

  • 放射性直腸炎

前立腺がんや子宮頸がんなどに対して放射線治療を行った場合に、その数か月後から数年後(1~2年後が多い)に出血を認めることがあります。放射線が前立腺や子宮だけでなく直腸の粘膜にもダメージを起こし、出血を認めることがあります。

 

 

【診断】

診察をしていると「血便が出たのですが、大腸がんですか?」と聞かれることがしばしばあります。大腸癌が心配になる気持ちは分かりますが、残念ながら診察だけでは大腸癌かどうかは分かりません。また鮮血が出た時に「痔があるから、そこから血が出たのかな」と放置していたら、実は進行した直腸がんが原因だったということもよくあります。(逆に、大腸癌でも出血を来たさないこともよくあります)

 

問診では、腹痛や発熱(炎症)を伴うのか、食事で生ものや古いものを食べていないか、海外渡航歴(特に衛生環境の悪い地域)がないか、薬の内服歴(抗生剤や、抗血栓薬の内服がないか)などを確認します。腹痛を伴う場合は部位も確認します。(大腸はお腹全体に位置するため、右下腹部の盲腸や、左下腹部のS状結腸など、様々な部位に症状を来たします)

そのほかにも、血便が1回だけなのか、持続しているのかなど、様々な情報をもとに鑑別診断を進めていきます。

問診で大事なことの一つに「大腸内視鏡検査の検査歴があるか」があります。一般的に大腸癌ができるには、大腸ポリープが515年かけて癌化するとされており、数年前に大腸内視鏡検査を受けていた場合は大腸癌の可能性は低くなります。一方、これまで大腸憩室を指摘されたいた場合は、大腸憩室出血を鑑別に挙げる必要があります。

 

直腸診(肛門から指を入れて直腸を診察)を行うことがあります。直腸診を行うことで、今現在出血が続いているのか、付着する便の色は、痔が触れるかなどの情報が分かります。ただし、あくまで診察の一つであり、これで病気が確定するわけではありません。

 

また血液検査を行うこともあります。血液検査で貧血がないか、炎症反応が上がっていないかをチェックします。場合によっては腹部エコーを行うこともあります。大腸に腫瘤がないか、大腸の壁肥厚がないか、腹水がないかをチェックすることがあります。ただ、超音波は空気があると散乱されて見えなくなるため、大腸ガス(オナラ)のせいで腹部エコーでは詳しく見えないことが多く「腹部エコーで問題がないから病気がない」とは残念ながら言えません。

 

 

そのうえで、最終的に診断を確定させるためには「大腸内視鏡検査」を行います。

大腸カメラで直接腸の中を見ることによって、炎症、ポリープ、癌がないかを調べることが出来ます。

通常の大腸カメラは、検査の前日および当日に下剤を内服して便をすべて出してから検査を行います。しかし出血量が多いなど緊急性を要する場合は、下剤による前処置を行わずに(浣腸程度で)検査を行うことがあります。大腸の中には常に1~2㎏程度の便が残っているため、また大腸内に血も交じって詳しく観察することはできません。緊急で行う大腸カメラはあくまで「今現在出血が続いているか」を主に観察すると同時に、「出血点が分かれば止血処置を行う」目的で行われます。

 

  • 【血便があればどうすればいいのか?】

まずはかかりつけの先生に相談、できたら消化器内科専門医に相談しましょう。

問診および診察を行って、治療方針が決まります。その際のアドバイスとしては「出血した時のトイレの写真を撮っておく」ようお勧めします。

「血便」といってもイメージは個人差があります。また口で説明するのは難しく、医師に写真を見せることでより診断が正しいものに近づきます。恥ずかしがらずにぜひ診察で提示してもらえたらと思います。

 

【医療法人 幸生会】

  • 森ノ宮胃腸内視鏡ふじたクリニック
  • 大阪本町胃腸内視鏡クリニック

 

鎮静剤を使った、楽な胃カメラ、痛くない大腸カメラを行っている内視鏡専門クリニック

2016年森ノ宮胃腸内視鏡クリニック 開業(JR森ノ宮駅前)

2023年大阪本町胃腸内視鏡クリニック 開業(地下鉄堺筋本町駅前)

胃がんのリスクであるピロリ菌の検査および治療、大腸がんのある大腸ポリープ切除を積極的に行っています。その他、胃腸の症状に対する診察や投薬も行っています

 

 

※診察はネットからの予約がおすすめです。

(大阪本町胃腸内視鏡クリニックは完全予約制)

 

 

※大阪本町胃腸内視鏡クリニックでは 20235月より肥満外来も行っています。

肥満は、糖尿病や高脂血症、高血圧症といった生活習慣病を引き起こすだけでなく、大腸がんや食道がん、肝臓がんや膵臓がんのリスクになることが分かっています。

血液検査、腹部エコー検査、胃カメラ、大腸カメラで総合的に検査を行います。

内科治療も併せて行っています。

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